【ドル円】2023年下半期見通し -上限147円・下限120円

2023年も(欧米基準では)第三四半期·下半期に突入したということで、今回は2023年下半期のドル円見通しについて共有したいと思う。
基本的には、昨年末に投稿した2023年ドル円見通し、2月に投稿したアップデートの流れを引き継ぐものであるが、より最新の情勢を踏まえて上限と下限の目処を修正した。(過去投稿のリンクは下記を参照)


現状確認
チャートはドル円の月足である。

まず上半期の動きから振り返ってみると、過去半年は年初につけた127.20円を下限、6月末につけた145円を上限とするレンジ内で動いている。(チャートの破線水平線)
また、この下限の価格は2021年から2022年までドル円が上昇した時の半値でもある。

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下半期の上限・下限目処
上値の目処については昨年末の投稿では142円付近としていたが、これは破られてしまったため147円に修正した。
これは年足の戻り高値が控える水準である。
基本的には2023年中にこの水準は超えないものと見ている。


次に2022年のドル円相場の急上昇の要因の一つである日米金利差に目を向けてみたい。
まず米国側はインフレの鈍化が見え始めており、利上げ停止と据え置きのフェーズが意識され始めている。
もちろんこれから再びインフレが上振れするリスクもあるかもしれないが、22年のように米ドルが一方的に買われる動きはメインシナリオとしては考えていない。

また、現在まで米国の景気は強さを見せ続けており、ソフトランディングシナリオが有望視されているが、下半期にこれまでの利上げの遅行効果が現れ始め、雇用の悪化や企業活動の落ち込みが顕在化するようであれば、それこそ利下げの観測が台頭し、ドルの上値を重くすると見ている。
なお、筆者は2023年中の米国の利下げは想定していない。23年は据え置きで終わると見ている。

一方の日本側については、7月28日にYCCのサプライズ修正が行われたことで、今後もYCCの撤廃やマイナス金利の解除といった金融政策の修正観測が残り続けるのではないかと見ている。特に145円以降は昨年政府の介入が行われた水準ということもあり、上値が重たくなってくるであろう。

仮に147円を月足の終値でブレイクするような事態となれば再び見通しを修正することとしたい。
それが起きる場合のシナリオは、米国側については、インフレはやっぱりまだ退治できませんでしたという事態が起こりFRBの利上げが再開していくこと、そして日本側は、7月28日にYCCの修正が行われたものの、その後は特に何も変更がなく大規模緩和継続といった場合が考えられるだろうか。これは今回のメインシナリオからは外れるので、その時にまた考えることにしたい。


下値の目処は120円とした。
これはなかなか悩ましいところなのだが、テクニカルと日米金利差の二つの観点から見ていきたいと思う。


テクニカル
まず前提として、筆者は以下のチャートに示した通り2021年から2022年の上昇に対する調整がどこまで行われるかという目線で見ている。
つまり昨年の152円手前から現在2023年7月までに至る値動きは全て①に対する調整と見ている。


週足
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チャートの横軸に引いたフィボナッチ比率に注目していただくと、現在は1.414のポイントに位置しており、2021-2022年の2年の上昇に対して約半年経過したポイントである。
そして横軸の1.618のポイントがちょうど2023年末と重なり、2年の上昇に対して1年かけて調整したポイントでもある。
調整の時間軸としては良い塩梅である。この辺りが調整の終了地点になるのではと見ている。


次に価格の観点で見ていくと、青のボックスで示した2022年10月からの下落の1.272のポイントが120円水準となる。
調整波の水準としてはよくあるレベルであり、その観点から120円を一つの目安とした。
またこの水準は2021年から2022年の上昇のフィボナッチ61.8%水準とも重なる。



日米長期金利差の行く末
最後に、今後半年間で米国が利上げ停止・据え置きを行うとなった場合に、日米長期金利差はどのように変化するかを考えてみた。
これについては正直検討もつかなかったので、過去にFRBが利上げ停止した時に米国の長期金利(ここでは10年国債利回りとする)がどの程度変動したのかの事例を参考に計算してみた。


以下のチャートは、米国10年国債利回りの月足にFRBの政策金利(下段)を表示したものである。

過去直近3回の利上げ停止場面を青のボックスで示している。
(ご覧いただいてわかる通り、利下げ局面では長期金利は大きく下がるものの、据え置き場面ではそれほど大きな変動は発生していない。)


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これによると、過去の利上げ停止局面では概ね12%から22%の下落幅になっていることがわかる。
もちろん長期金利に影響する要因はいろいろあるので、あくまで参考として見ていることはご了承いただきたい。

この数値を元に、仮に下半期のFRBの利上げ停止局面で、10年国債利回りが20%下落すると仮定してみる。
投稿執筆時点での10年国債利回りは3.9%なので、ここから20%下落した場合は3.12%水準となる。


さて一方の日本側であるが、7月28日の日銀金融政策決定会合では、長期金利変動幅を0.5%を”目処”(という文言が追加された)とし、指値オペ実施の金利を0.5%から1%に引き上げるという修正が行われた。
植田総裁の発言では長期金利が1%を絶対に超えることがないように国債買い入れを行うそうである。

それに基づき日本側の長期金利が1.0%まで上昇していくと仮定してみると、日米金利差は3.12% - 1.0%で2.12%となる。
米国側の長期金利の振れ幅を考慮して、2.0%-2.5%の範囲に日米金利差が収まっていくものと仮定してみる。

では日米金利差がこの範囲で推移するとき、ドル円レートはどのようになると考えられるだろうか?


以下のチャートはドル円の月足に、日米長期金利差(10年国債利回り差)(中段)と日、米の長期金利(10年国債利回り)(下段)を表示したものである。

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中段には、日米金利差=2.0と2.5のラインを引いている。
2020年以降の値動きにおいて、日米金利差がこの二つの水準だった時のドル円レートを見てみると、

金利差2.5の時 : 高値139.38, 安値132.50, 半値135.94
金利差2.0の時: 高値125.10, 安値114.64, 半値119.87

となり、金利差2.0の時の半値が120円となりテクニカルで導いた水準と一致する。

あくまで参考として計算してみたが、テクニカルで導き出した値と同じような結果になったことから、案外この程度に収まるのかもしれないと個人的には腑に落ちた。
ということから、120円という水準が下半期に到達し得る下限の一つの目処として妥当な数字なのではと判断した。

振り返ってみると、この数字も昨年末の投稿と同じ結果となったが、下半期はやはり米国の景気動向に利上げの影響がどう表れるかが最大の注目ポイントと見ている。

どのような方向に動いても楽しみに相場を観察していきたいと思う。

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